今回はいつもと趣向を変えて、実験ではなく数値シミュレーションを試みようと思います。
使用するのは離散要素法(Discrete Element Method : DEM)です。
DEMとは個々の粒子に作用する接触力をモデル化し、すべての粒子に対する運動方程式を解くことで粒子全体の挙動を求める手法です。具体的には粒子同士の衝突・摩擦、粒子と壁の衝突・摩擦、重力・遠心力等の外力等(図-1)を考慮した計算を行います。
微小時間ステップごとに個々の粒子に対する運動方程式から粒子に働く力を求め、次の時間ステップにおける粒子の座標を算出します。そして新しい座標で再度、粒子に働く力を求めます。これを繰り返すことで粒子の挙動を解析します。
粒子間の接触力を求めるには図-2のようなバネ、ダッシュポット及び摩擦スライダを用いたモデルがよく用いられます。また粒子と壁との接触についても同様のモデルを使用します。
シミュレーションを行うにあたって混合装置の動きと粒子に働く力を整理します。
一般的な自公転式混合装置では容器は常に公転の中心方向を向いているので、容器の傾きの方向から見た遠心力の方向は常に同じです。(図-3)
それに対してSANMIXでは図-4のように容器の傾き方向から見た遠心力の向きが時間とともに変化します。
この点に注目して両者のシミュレーション結果を比較します。
以下にシミュレーション結果を示します。図-5のように容器の上から見た図となります。また矢印は公転による遠心力を表しています。右側の一般的な自公転式混合装置に比べて、左側のSANMIXでは大きな対流が起きていることがわかります。SANMIXでは一般的な自公転式混合装置とは異なり、容器の向きに対する遠心力の向きが時間とともに変化します。その変化の向きが容器の自転方向とは逆向きであるため、粒子視点での容器の回転速度が大きくなり、その結果、大きな対流が発生したものと考えられます。
今回は両者の違いを簡単に見るために粒子を少なくしてシミュレーションを行いましたが、今後は3次元的な動きの違いを比較するため粒子の数を増やした条件でシミュレーションを行っていきます。
⇒3次元でのシミュレーション結果についてはこちら
参考文献
[1] (社)日本粉体工業技術協会編, 「粉体混合技術」, 日刊工業新聞社 (2001)(https://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00000593)
[2] 酒井幹夫, 茂渡悠介, 水谷慎, 「粉体の数値シミュレーション」, 丸善出版 (2012) (https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b294230.html)